満ちていく、満ちていく。
 淡く輝く光を受け止め、心に沁みこんでいく。



 「おおー…いいお月様」
 家のベランダに敷いてあるレジャーシートの上に、無防備に転がる。
 今宵満月、優しい風を受けながら月光浴を満喫中。
 「なんというか。落ち着くよねー」
 ちょっと丸まり、瞳を閉じてると、ぽつんと後ろに居る彼女が独り言。

 横でコツン、と音がした。
 ふと顔を上げると、彼女が飲み物を持ってやってきた。
 「ユウにも持ってきたよ、ほら」
 と、自分の前に飲み物を置く。
 そのまま横に座り、一緒に月を眺める。
 「月の光って不思議だよねー。色々なチカラがあるって言われてるけど…どうなんだろうね」
 くすくす笑いながら、彼女はプシュッと缶ビールのプルトップを開けた
 そのままぐいっと気持ちよさそうに飲み、お約束のごとく「ぷはーっ」と唸る。


 「ねぇ…ユウ」
 少し間を置いて、彼女が切り出した。
 「私ね……彼と、別れちゃった」
 そのまま、自分は会話を聞く。特に返事する事も無く。
 静かに流れる夜の空気に身を委ねながら、彼女は言葉を続ける
 「ダメだね…強がってると、大事な言葉も言い出せなくなる。傍に、居てほしかっただけなのにね…。涙もこらえてると、ただの意地っ張りだよね…ふふ」


 小さく微笑んでも、その笑顔がきっと痛々しいに違いない。


 自分は、彼女の苦しみをこうして聞くことしか…できない。

 それが、彼女に出来る精一杯だけど。



 身体を起こし、そっと、その手に触れてみた
 ぽんぽん、と。
 撫でるように。


 「ユウ……」

 「……」

 「…ありがと」

 優しいなぁもう〜!、と頭をぐしゃぐしゃ掻き回された。勢いよすぎ。
 「よし、いつまでも落ち込んでられないよね!明日はいっぱい買い物してくるぞー!」
 えいえいおー!と立ち上がってビールを全部飲み干す。
 そしてお約束の「ぷはーっ!」で締めくくり。
 「じゃあお風呂行って来るねっ。明日も頑張るよ!」



 「―――がんばれ」



 「うん!…あれ?」
 部屋に戻り、着替えの準備をしてた彼女が止まる。
 こっちを暫くじぃーっと見て…
 「…気のせいか」



 月の気まぐれですよ。
 猫が喋れるなんて、ありませんから。








































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