揺れる白。
空へと舞い上がり消えて行く煙。
残るのは服に纏う独特の香り。
其れは、貴方が居た証。
じっと見つめて。
おもむろに、消えた熱を確かめようと、触れる。
「なにしてんだ」
手前でとめた彼を見上げ、くすっと微笑む。
「此処に、居たんだなって」
なにいってんだ?と、不思議な表情をして、帰る支度に戻る。
夜明けが近い。
シーツに包まって、私はもう一度彼を見た。
「今度の仕事、長いの?」
「あー…そうだな、海外進出らしいからな。企画が纏まるまでは向こうだと思う」
「そっか…」
包まったシーツに顔を埋め、貴方の匂いに身を委ね。
何をするわけでもなく、何かを言うわけでもなく。
ただ、貴方の支度が終わるのを。ベッドの中で待っていた。
恋人だけど、距離があって。
ふと何処かへ消えていっても、きっとふらっと現れる。
放任しすぎと言われてしまうけど。
私は、信じてたから。
貴方の匂いを待ってるから。
「んじゃ、いってくる」
「いってらっしゃい」
頬に触れる手が、少し冷たい。
長い指が、優しく髪をかきあげ。
口唇に残った味は。
少し苦く、優しい貴方の煙草の味。
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