「この指とーまれっ」
「…幾つだよ、お前」
就職活動も無事に終わり、折角だから日帰りで遊びに行こうと急遽決めたドライブ。
なのに、むすっとしてる人約1名。
…いつまで車の外に向かってにらめっこの如く不機嫌顔してるんだか。
「ねーぇーっ。いつまで不貞腐れてるのー?」
「……」
この調子だもんね…。
折角取れたての免許掲げて、張りきって運転してるというのに……まさか。
私の運転怖がってる…?
「う…運転には自信あるよ!これでも試験官のおじさん、すごく誉めてくれたんだから!」
「……」
「学科ももちろん一発で通ったし、実技も…ば、バックは苦手だけど………でも!」
「運転集中しろよ」
「―――…はぃ…」
着いたのはとある観光名所。
自然が豊かで、空気も美味しい。
…ちょっと、やっぱまだ寒いけどね。2月だし。
「お前ってホント無駄に元気だな」
「なによその無駄にって」
「そのまんま」
「………あんたねぇ…」
なんか…今日はやけに棘ありません?
しかめっ面ばっかだといいこともこなくなっちゃうぞ?
少し高台にある小さな展望台。
私達しか居ないみたいで、足音だけが小さく聞こえてくる。
「―――すごぉーいっ!!」
そこから見えたのは、これから沈んでいく真っ赤な夕陽。
空一面を赤く染めていく存在感に…都会では味わえない圧迫感がある。
「綺麗だねぇ…」
「ん…」
―――やっぱり反応悪い。
「ねぇっ」
腕をがしっと掴み、私は顔を背ける彼を無理やりひっぱった。
「今日はおかしいよ?不満があるんならいいなよ。何一人で黙ってるの」
「俺は別に…」
「おかしい」
ぐっ…と顔が引き攣る。
付き合い短くないでしょ?私達。なんで何も言ってくれないの。
「―――…」
「ん?」
……………。
―――――――――――――えっと………。
「ほら、もう暗くなるから帰るぞ」
逃げる様に、先に車に戻る彼。
夕陽の所為で顔色もよくわかんない。
「…ひ、卑怯だよぉ…」
私の両手には、太陽の様に赤い、ルビーの指輪。私の誕生石。
確かに聞こえた言葉は…。
『結婚しよう』だった。
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